多自由度セミナー

第一回(7/11)

微小非平衡系における情報熱力学

7/11(月) 15時00分〜 (2時間程度を予定)

  • 講演者 沙川貴大氏(京都大学基礎物理学研究所)
  • 要旨

情報と熱力学の関係は、Maxwellのデーモンのパラドックスと関連して古くから 知られ、
多くの議論がなされてきた[1]。近年の微小非平衡系を測定・制御する技術の進 歩により、
デーモンは思考実験の世界を超えて、理論ばかりでなく実験的にも重要なトピッ クとなり
つつある。今回のセミナーでは、情報処理プロセスにおける熱力学第二法則に関 する、
我々の理論および実験の結果について議論する。
理論的には、我々が非平衡統計力学と量子情報理論に基づいて導出した、情報処理
プロセスにも適用可能な形に拡張された熱力学第二法則について議論する[2,3]。
これらの拡張された第二法則から、フィードバック・測定・情報消去といったプ ロセス
に必要なエネルギーコストの原理的な下限が明らかになる。実験的には、サブミ クロン
スケールのコロイド粒子に対して室温でフィードバック制御を行うことにより、
情報(相互情報量)を自由 エネルギーに変換できることを示した実験について 議論する[4]。
これは1929年にSzilardが思考実験で提案したタイプのデーモンのはじめての実 現になっ
ている。また、時間が許せば、非平衡関係式(Jarzynski等式)の情報処理過程 への拡張[5]、
およびその実験的 検証[4]についても議論したい。我々の結果は、情報量と熱力 学量を同等
に扱う形になっており、いわば「情報熱力学の第二法則」と呼びうるものになっ ている。

参考文献:
[1] "Maxwell’s demon 2: Entropy, Classical and Quantum Information, Computing",
H. S. Leff and A. F. Rex (eds.), (Princeton University Press, New Jersey, 2003).
[2] T. Sagawa and M. Ueda, Phys. Rev. Lett. 100, 080403 (2008).
[3] T. Sagawa and M. Ueda, Phys. Rev. Lett. 102, 250602 (2009); 106, 189901(E) (2011).
[4] S. Toyabe, TS, M. Ueda, E. Muneyuki, and M. Sano, Nature Physics 6, 988 (2010).
[5] T. Sagawa and M. Ueda, Phys. Rev. Lett. 104, 090602 (2010).


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名古屋大学 情報科学研究科 複雑系科学専攻 多自由度システム情報論講座