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谷村 省吾
TANIMURA Shogo
教授
博士(理学)

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 2005年,アメリカ,ニューハンプシャー州,ワシントン山にて

授業の資料
数学・物理通信
不確定性関係をめぐる議論

所属   名古屋大学 大学院 情報学研究科 複雑系科学専攻 多自由度システム情報論講座
 
郵便宛先 〒464-8601 名古屋市千種区不老町 名古屋大学 情報学研究科 谷村省吾
 
自己紹介
 名古屋生まれ、名古屋育ち。関西勤めが長かった。名古屋大学工学部応用物理学科卒業。名古屋大学大学院理学研究科物理学専攻修了。その後、東京大学(学振研究員)、京都大学(助手、講師)、大阪市立大学(助教授)、京都大学(准教授)を経て、2011年に名古屋大学(教授)に着任。2017年に所属部局が情報科学研究科から情報学研究科に、兼任学部が情報文化学部から情報学部に改組された。
 学部生のときは、主に固体物理・金属電子論を学び、4年生のときには統計力学の研究室(工業力学講座)に所属した。卒業研究は近藤効果(磁性不純物を含んだ金属の電気抵抗が低温で増大する現象)の理論に関するレビューだった。大学院ではE研(素粒子論研究室)に所属した。猫の宙返りとベリー位相のゲージ理論に関する研究で修士論文を書いた。ファインマンによるマクスウェル方程式の証明を相対論的に拡張するという研究を行い、大学院生のときに初めての英語論文を書いた。多様体の場の量子論の研究により博士論文を書き、博士学位取得。
 その後、多様体上の量子論、経路積分、トポロジカルソリトン、空間並進対称性の破れの場の理論モデルの構築と解析、表現論を使ったシュレディンガー作用素のスペクトル解析、量子コンピュータの最適制御、量子力学における相補性などを研究。2004年には、10年来の未解決問題であった等ホロノミー問題を等質空間の場合について厳密に解き、量子コンピュータの最適制御問題を解いた。2010年にはベルの不等式の一般的な構成方法を発見し、古典論理と量子論理を比較検証するための新しい不等式を作った。
 最近は量子基礎論(ベルの不等式の数理、不確定性関係、代数的量子論など)・力学系理論(量子系・古典系両方)を研究している。幾何学的な視点・方法論を得意とし、幾何的アプローチから理論物理の諸問題に横断的に取り組みたいと思っている。非平衡熱力学・非平衡統計力学にも関心がある。ゲージ理論についてもまだまだ考えたいことがある。また、圏論の物理学・工学への応用も目論んでいる。
 
指導していただいた先生
 学部生時代はとくに名古屋大学の佐藤肇先生(数学好きの工学部生だった私のセミナーの面倒を見ていただいた)、中村新男先生(光学を教えていただき、量子光学という新しい分野の存在を教えていただいた)、本間重雄先生(統計力学や量子力学の演習で鍛えていただいた)、羽賀栄次郎先生(卒業研究を指導していただいた、羽賀先生が定年退官されるときに私は卒業した)に親切に指導していただいた。大学院生時代は、大貫義郎先生(場の量子論、研究全般に取り組む姿勢を教わった、大貫先生が定年退官されるときに私は修士課程を修了した)、沢田昭二先生(素粒子論を教わった、自由闊達な雰囲気の中で研究する喜びを教えて下さった)、北門新作先生(何かと風変りなテーマに興味を持つ私を励まして下さった)、三田一郎先生(CP対称性の破れなど重要な物理を研究する姿勢を教わった)に厚く面倒を見ていただいた。土屋昭博先生(トポロジーの手ほどきを受けた)も強烈な方だった。東京大学の学振PDであった期間には江口徹先生・藤川和男先生・柳田勉先生(一流の物理学者の姿を見せていただいた)に大変ご面倒をおかけした。大学教員になってからは、京都大学の岩井敏洋先生(力学系に対する幾何学的な視点を教わった、何ごとに関しても支援していただいた)に大変お世話になった。また、名前は挙げないが、多くの先輩・友人たちにお世話になっている。
 
自分が学生だった頃の経験
 子供の頃からずっと名古屋にいて、大学も地元の名古屋大学だったので、とにかく外の世界に出てみたいと思い、体育会のワンダーフォーゲル部に入部しました。現在の情報学研究科棟の北西(A館の西隣)の2階建て倉庫のある場所には、かつては、オンボロのプレハブ部室がありました。床には大きな穴が開いていたし、窓は全部破れていたし、本当にボロボロの部室でした。その後、部室の建物は変わりましたが、いまでも学生たちがいろいろやっている様子を見ると懐かしい気持ちになります。学生時代は、山登りやサイクリングや川下りなど、ワンゲル活動に明け暮れていました。大きなキスリング(ザック)を担いだまま授業に出て、みんなに笑われたこともありました。
  「ワンゲル部にいました」と言うと、「山登りですか、いいですね」と言われることが多いですが、日本の山は晴れよりも雨のことが多く、我々は登山開始時点で雨が降っていても必ず登るので、よい気分はしませんでした。濡れた草をかきわけて山道を歩いていると足にヒル(吸盤状の口を持つ吸血動物)が上ってきて噛まれて血を吸われるし、レインウェアの中は汗で蒸れて暑いし、立ち止まるとたちまち体が冷えて寒くなります。山頂に着いても、雨雲の中に立っているようなもので、景色はまったく見えません。雨の中でテントを張り、もちろんシャワーも風呂もなく、着替えもせずに寝袋に入り、夜寝ていると雨水が寝袋に浸みてきて足元がひんやりしてきても明日に備えて体を休めるために起床時間までは目をつぶって堪える、朝起きたらすぐメシを炊いてかきこんで、ずぶ濡れのテントをたたんでザックに押し込む。そういう生活でした。また、山の中では食器を洗剤と流水で洗うことはできないので、食器がぴかぴかになるほどきれいに食べる必要があります。食器はまだいいのですが、ご飯を炊いた鍋やカレーを作った鍋をきれいにするのは、大変でしたし、きれいにはなりませんでした。それでも翌日にはまたその鍋を使わなければなりません。キャンプ生活は、ものすごく不便で不衛生です。山から家に帰って来ると、「雨風の心配をせずに乾いたふとんで眠れる」ことに涙が出るほど感謝しました。また、自分がふだん文明の利器に守られて生活していることや、人間がいかに弱い生き物であるかということを、いやというほど思い知らされました。山中で直径1メートルほどの落石が人にぶつかりそうになるところも見たし、実際、落石に当たって大けがをしたメンバーもいたし、マムシ(毒蛇)に噛まれて命の危険に瀕したメンバーもいました。山中でメンバーが体調を崩して、どう対処すべきか判断を迫られることもありました。
  ワンゲルでは登山以外の活動もしました。材木で組み立て式のいかだを作って、四国の四万十川の上流まで5人で運んで、川の上流から河口まで川下りしたこともあります。3人はいかだに乗って、2人は自転車で並走するという方式でした。仙台から青森県下北半島の北端の大間崎まで三陸海岸沿いにサイクリングもしました。いろいろなことをやったおかげでメンタル的にも肉体的にもタフにはなったと思います。また、たんに無茶な冒険をするのではなく、目標を決めて事前調査して計画を立てて実行する、事故があったら報告する・相談して対処を決める、事前に事故を予測する・バックアッププランを用意する、リーダーはメンバーの体調に気を配り、志気を高める、など、振り返ると、何と言ったらよいのか素晴らしいプロジェクト・トレーニングになっていました。いま、自分の研究室はそんなに上手に運営できているだろうか?と思ってしまいます。
  勉強やアルバイトにも忙しい学生生活でした。大学の授業も勉強になりましたが、自分で本を買って読んだことの方が身に付いた気がします。解析力学・量子力学・統計力学は自習でマスターしたと思っています。教養部時代はロシア語の予習が忙しかった覚えがあります。友人から「谷村は一日48時間あるのか?」と言われるほど、よく活動していました。学部科目の授業ではいつも講義室の最前列の席に座っていました。たまに先生に質問して、思ったような答えが返ってこないと、すぐに居眠りしてしまいました。友人からは「また谷村君一番前の席で寝て、先生にプレッシャーかけている」などと言われていましたが、先生には申し訳ないと思っていました。
  量子力学の演習授業中に「(講義担当の)先生の量子力学の教え方は古い」と私が友人にささやいたのを先生に聞き取られ(私の声が大きすぎた)、だったら君が講義してみろと先生に言われ(「君が一番わかりやすいと思うやり方で君が講義してもいいよ」という優しい言い方だったと思います)、その場で(応用物理学科の教室で)量子力学の講義をしたことがありました。いま思い返しても自分は生意気な学生だったと思います。
  高校まで数学と理科は得意で、とくに物理が好きでした。好きなことをやりながら人の役に立つことをしたいと考えて高校卒業後の進路として選んだのは工学部の応用物理学科でしたが、大学に入って物理学とくに量子力学を勉強しているうちに、やっぱり物理が好きだ、とことん物理を知り尽くしたい、自分でも物理法則を発見したい、と思うようになり、大学院は理学研究科物理学専攻に進学しました。大学に入ってからいろいろなことをしたおかげで、一番好きなこと・一番自分に向いていることがわかったと思います。そういう意味で、学生時代をとても有意義に過ごしたと思っています。
 
学生へのメッセージ
  学生の皆さんは何でもいいから自分の得意分野を一つは持ってほしいと思います。対象は既存の学問でいいです。徹底的に勉強すると、蓄積した断片的な知識が全部噛み合って見えてくる瞬間があります。「猛烈によくわかった」、「何もかも透き通って見える」、「この科目については自分は世界で一番よく理解しているのではなかろうか」(もちろんそんなはずはないのですが)と思えるくらい透徹した理解に達する経験を持つと、新たな問題にも直面できる自信がつきます。
  いまは、学部生および大学院生を受け入れて当講座の教員と協力して研究指導しています。私の研究室への配属を志望する学生には、とくに優れた予備知識を要求しませんが(とは言え、最低限、線形代数と微積分は理解していてほしいですし、量子力学を理解していると研究を進めやすいです)、柔軟かつ緻密な論理的思考能力を高めたいという意欲と、森羅万象に対する知的好奇心を持っていてほしいです。
  君たちのやる気をくじくようなことは言いたくないですが、大学に入学してからの時間を無為に過ごしてきた人や、学問的にやりたいことがない人や、楽(ラク)して卒業したい人は、うちに来てもらっても、結局何も身につかず、つまらない思い、あるいは辛い思いをするだけだと思います。そういう人は当研究室に配属されない方がお互いのためですので、よく考えて選択してください。
  せっかく大学に入ったなら、学べることを貪欲に吸い尽くそう、やれるだけのことをやろう、できなかったことができるようになろう、自分が好きなこと・自分に向いていることを見つけて、それに向けて努力しよう、やるからには真剣にやろう。そういうふうに考えて行動してほしいです。もう一つ言うなら、思いやりのある人になってほしいです。
  やるからには真剣にやる。このことは強調しておきたいです。野球でもサッカーでも将棋でも、遊びではなく、勝負をかけて、真剣な思いでやればこそ、勝つために何をすればよいか本気で考えるし、勝つための努力は惜しまないし、勝ったときは心から嬉しいでしょう。負けてヘラヘラ笑っているようでは物事は上達しません。「負けたら泣く」くらいの意気込みでやってほしい。受験勉強だけが勝負ではありません。大学入学がゴールではありません。世の中には、ものすごく努力していて、人類にとって貴重なものを発見したり創り出したりしている人がいます。そういう人たちの競争に参加するつもりで大学で学んでほしいと思います。
 
担当科目(2019年度)
 全学教育:物理学基礎2(電磁気学)
 情報学部:複雑システム系序論2(オムニバス講義),物質情報学6(量子力学),複雑システム系演習3
 大学院:現代数学と力学特論,複雑系科学特論1(オムニバス講義)
 
主な出版物

    Smoke_on_Shogo.jpg
   2006年,アメリカ,ワイオミング州,イエローストーン国立公園にて
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Last update: April 5, 2019